自ら探究する力を育む「学びの場」を提供し、その研究成果を教材開発や全国の地域や学校現場などにフィードバックすることを目指しています。
KIDA(キーダ)PROJECTとは
KIDA(キーダ)PROJECT2020で実施したオンライン探究ワークショップ【(R)こども商品開発】で子供たちが取り組んだテーマは、「伝統産業の後継者問題」でした。
子供たちは、一流の職人や商品開発のプロから得た本物の学びを活かし、子供たち自身で伝統を活かした「新商品・新サービス」を企画。成果発表として、2021年1月と3月に「プレゼンテーション会※3」を開催し、小学2年生から高校生までの総勢41名が職人や企業のプロにオンラインでプレゼンテーションしました。
オンラインプレゼンテーション会の様子
その後、提案された商品企画の中から2つの商品を職人がプロトタイプ製作し、イベントに展示。また、同企画で別のビジネスコンテストに挑戦した参加者も出ました。
新商品企画のプロトタイプ展示
KIDA(キーダ)PROJECT2020の研究は、探究プロセスを経て本物のプレゼンテーションを成し遂げる【(R)こども商品開発】ワークショップを全てオンラインで実施。子供たちがどう変容するかを仮説検証しながら調査・研究を行いました。
そこで、探究学習を進めるにあたっては「1.プレゼンテーション制作や振り返りなどにより自己の学びを見える化すること」「2.探究意欲を高めることが生み出す主体的な学習姿勢」「3.職人・企業・地域などと連携した学校以外の『学びの場』をつくること」の3つが、特に重要であることが明らかになりました。
KIDA(キーダ)PROJECT2020の試みは、発展途上の学習分野である探究学習においては挑戦的なものですが、新しい時代を生き抜く子供たちに求められる「今ない新しい価値を生み出す力」を育む探究学習の可能性を具現化する大きな一歩となりました。
全国の小・中・高校生、そして現場の先生方に届けることができる教材・指導方法の提供を目指し、引き続き活動してまいります。※4
▼※1 KIDA(キーダ)PROJECT2020 詳細ページ
https://peraichi.com/landing_pages/view/kida2020/
▼※2 本研究は、博報堂教育財団「2020年度 児童教育実践についての研究助成」を受けています
https://www.hakuhodofoundation.or.jp/subsidy/recipient/2020.html
▼※3 3月プレゼンテーション会の様子
https://oimachi-keio.com/pj/ooimachi-campus/kida2/
▼※4企業連携型KIDA PROJECT2021「おやつ子ども会議」を2021年12月4日に実施
https://kidsm.hp.peraichi.com/kida2021
■教育改革と現場のギャップ(醍醐身奈氏談)〜探究学習の研究の必要性〜
学習指導要領の改訂によって、戦後最大級とも言われる大きな教育改革が行われています。
これは、まさに「Society 5.0」時代の新しい学びを意識したものであり、特に高等学校のカリキュラムでは、「総合的な探究の時間」をはじめとして「探究」が各教科の中で重視されるなど、主体的に学ぶことがこれまで以上に求められるようになっています。
一方で、学校現場では「探究的な学習の時間」の指導内容や方法のスタイルが未だに整備されないまま、他の学習活動(各教科の補習や学校行事等)に置き換えられ、質的・量的にも学習の保障ができていないという実態も少なからずあります。
私自身、大学で教職課程の授業を担当すると同時に、教員免許状更新講習で講師をしておりましたが、この「探究学習」を学生や現場教員に指導していくことに大きな不安がありました。
なぜならば、自分自身が「探究」というものを焦点化して学んできた経験もなく、それがどのようなものなのか、十分に掴み切れていなかったからです。そこで、大学院で「探究学習とは何か」について、学び直しを始めたことが本研究を行うことになった経緯です。
■研究成果
研究成果については、2021年10月3日に実施された「2020 年度 第 15 回 児童教育実践についての研究助成 研究成果報告会」にて、報告を行いました。
▼詳細な研究成果
https://www.hakuhodofoundation.or.jp/subsidy/recipient/pdf/15_06.pdf
<研究成果のポイント>
本研究の成果は、仮説に基づく以下の結果が実証できたことです。
1.プレゼンテーション制作や振り返りなどにより自己の学びを見える化することの重要性
児童・生徒が自律的に探究に取り組み、資質・能力を伸ばすためには、プレゼンテーション資料、振り返りシート、Photobookなどの作成を通じて、写真や文章を使って自己の学びを「文章化」・「見える化」することが必要であること。
2.探究意欲を高めることが生み出す主体的な学習姿勢
児童・生徒の探究的な学習への意欲が高まると、既存の知識やスキルだけでは物足りなくなり、より専門的で深い学びを自ら求めるようになること。
3.職人・企業などと連携した学校以外の「学びの場」の重要性
「探究学習」を支える教科横断的な学習システムやアクティブ・ラーニングを取り入れ、地域・職人・企業と連携して学校以外の「学びの場」をつくることが重要であること。
■挑戦意欲を育んだ探究学習「KIDA(キーダ)PROJECT2020」プログラム
「The職人」という商品企画をプレゼンテーションした小学3年生が、その後同企画を進化させ、「R-StartupStudio奨学金プログラム」オンラインピッチに挑戦し、最終選考に選ばれました。
※R-StartupStudio奨学金プログラム:社会課題を自分事として捉え、課題解決に向けた具体的アクションを起こそうと真剣に挑戦している多くの若者たちが、“自分の挑戦(活動)”に夢中になれる環境を整えることを目的とした18歳未満のみを対象とした奨学金プログラム
■プロの和裁士が子供が企画した商品のプロトタイプを製作
プレゼンテーションされた商品の中で、中学生の商品企画「角服」と小学生の商品企画「家紋バック」が「KIDA(キーダ)PROJECT2020」の協力団体の1つである品川職人組※に選ばれ、プロトタイプの製作及び、2021年3月27日(土)に大井町きゅりあんで実施された「木心(きごころ)」イベントで試作品として展示されました。
※品川職人組:品川職人組は、東京「品川」を拠点に、日本の古き良き伝統技術による伝統工芸を作る職人たちの組織。古きを伝承しつつも新しく洗練されたものづくりを軸に「新・伝統工芸」として国内外に発信しています。
▼品川職人組公式サイト
http://www.scmg.jp/
■KIDA(キーダ)PROJECT2020で使用した探究プログラム【(R)こども商品開発】とは
【(R)こども商品開発】は、一般社団法人キッズMが開発したオリジナル探究学習プログラムです。
小学生〜高校生が商品開発のプロから仕事を学び、情報収集・分析、アイデア出し、企画づくり、調査検証を経て、プレゼンテーションをつくり、最終的には本物の企業にプレゼンテーションする機会を提供します。
その機会が成功体験となり、格別な達成感を生み、【自信と挑戦意欲に火をつける】ことを目指してきました。
KIDA(キーダ)PROJECT2020の研究によって、【(R)こども商品開発】がこだわる「本物のプレゼンテーションの重要性」や、当社のノウハウが詰まった商品開発の探究プロセスを通して「探究意欲を高めること」、「探究意欲が高まることによって、主体的に学ぶ姿勢につながること」、また「企業や地域など学校以外の様々な人や組織と連携した学びの場の重要性」を検証することができました。
■【(R)こども商品開発】2022年1月8日開講「レギュラーコース」のご案内
1月からKIDA(キーダ)PROJECT2020で使用した【(R)こども商品開発】が経験できるコースがスタートします。
小中学生が楽しく取り組める「文房具」と「お菓子」をテーマにした、これからの時代に不可欠な力を小中学生のうちに身につけることができるプログラムです。
◉コース1:文房具×プラス株式会社
富士山消しゴムなどの楽しい文房具を題材に、7回のワークショップで商品企画を行い、プラス株式会社にプレゼンテーションします。(協力事業者:プラス株式会社)
▼詳細はコチラ:
https://peraichi.com/landing_pages/view/cxjyn
◉コース2:お菓子×株式会社おやつカンパニー
ベビースターラーメンなどの楽しいお菓子を題材に、7回のワークショップで商品企画を行い、株式会社おやつカンパニーにプレゼンテーションします。(協力事業者:株式会社おやつカンパニー)
▼詳細はコチラ:
https://peraichi.com/landing_pages/view/c2oni
■KIDA(キーダ)PROJECTメンバー
・醍醐身奈氏(主催)
修士(学術、政策・メディア)、博士(学術)
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修了
現在、慶應義塾大学SFC研究所 上席所員
大阪経済法科大学経済学部 准教授
慶應義塾大学SFC研究所 「みらいのまちをつくる・ラボ」、「Society5.0時代の学びと教育・ラボ」 プロジェクトメンバー、日本学校教育学会・国際交流委員会 幹事
・野垣貴子(キッズM講師)
国内航空会社勤務を経て人材教育会社・外資系企業にて人財開発のトレーニングに従事。一般社団法人日本親子コーチング協会認定コーチ・ピットインカード/マスターインストラクター
・熊本尚子(キッズM講師)
メーカーにて食品の商品開発・広告などの業務に従事し、様々なブランドマネージメント、新規プロジェクトなどを手がけてきた商品開発家。管理栄養士、保育士
※<参照>醍醐身奈氏の探究研究の歩み
■「KIDA(キーダ)PROJECT2020」の背景にある日本の後継者問題
「KIDA(キーダ)PROJECT2020」で、なぜ伝統産業をテーマに取り入れたのか。それは、私が院生だった時に受けた「ファミリー・ビジネス」という授業の中で、日本企業の後継者問題が深刻になっているという事実を知り、この問題をもっと子供たちに身近な社会課題として捉えて欲しいと思ったことがきっかけでした。
もちろん、Society5.0時代に入って、既存価値は次第に取捨選択されていき、無くなってしまうものも多くあると思います。しかし、先人が長年にわたって培ってきた伝統技術や価値が、世間に知られずにひっそりと失われていくのはあまりにも悲しすぎます。
まずは、子供たちに日本の伝統文化や産業の魅力や良さについて知ってもらい、探究を深めることによって自分なりにその価値を見出してみること、プロジェクトを通じて多くの子供たちにこうした体験をして欲しいと考えたのです。
■伝統文化、地域と子供たちを繋げること
「KIDA(キーダ)PROJECT2020」を進めるにあたって、最初の壁としてぶつかったのが、子供たちに情報を提供する私たちが江戸の伝統文化や産業のことをよく理解していなかったということです。
教材用のビデオ撮影を行うために、様々な職人さんや企業・組織等をおとずれ、インタビューを行いました。
そこでは、後継者問題が想像していた以上に深刻で複雑な問題になっていること、人だけではなくお金や物といった課題も多く残されており、こうした問題が特定の分野や職種でのみ課題として共有されていたことに、大きなショックを受けました。
まずは、いくつかの江戸の伝統文化に対する予備知識や、モノづくりのプロセスを動画にして、子供たちに視聴してもらい、自由な発想で伝統技術を生かした商品デザインに取組んでもらうことにしました。
「KIDA(キーダ)PROJECT2020」も保護者説明会に始まり、発達段階に応じたワークショップの開催、Google Classroomを活用した振り返りシートの提出等、キッズM・大学院生サポーターと常に連絡を取り合いながら、試行錯誤で進めてきました。
そして、オンラインで実施された最終の「プレゼンテーション会」には、品川区、墨田区、中央区などの職人や様々な企業や地域住民の方々に来ていただき、子供たちへのアドバイスなどをいただくことができました。子供たちにとっても貴重な経験になったのではないかと思います。
■みらいのまちをつくる・ラボの設立と地域連携探究学習の実践
理論研究も進んできた院1年の時、東京都品川区大井町に慶應義塾大学SFC研究所「みらいのまちをつくる・ラボ」が設立され、大井町周辺に住む子供たちや地域の人々と協働して、夏休み期間中に地域課題を解決する探究学習の実践を行いました。
そこでは、小学生から中学生がマインドマップを使って地域課題を「見える化」し、実際に地域の人々にインタビューをしたりしながら、課題の解決策を探究していきました。最終的には、たくさんの地域の人々に集まってもらい、研究成果発表を行うことができました。
発表ごとに地域住民からひっきりなしに質問や意見が出されましたが、子供たちはひるむことなく真摯に受け答えをしていたのがとても印象に残っています。さらに、自分たちでは調べきれなかったことを地域のお年寄りの方々から教えてもらう機会を得ることができ、探究学習を通じて子供も大人も「学び合い」ができることがわかりました。
研究成果発表
■「KIDA PROJECT」の立ち上げは、コロナ禍がきっかけ
大学院2年目、第15回博報堂教育財団の研究助成を受けることが決定し、さらに実践的な研究ができるとワクワクしていた矢先、コロナ禍の影響を受けて実践研究がほぼできない状況になってしまいました。
大学授業も全てオンライン、ラボでの活動も全面禁止、途方に暮れるというのはまさにこの状態なのだと痛感しました。そのような時に院生仲間に相談したところ、オンラインで探究ワークショップ【(R)こども商品開発】を行っているという一般社団法人キッズMをご紹介いただきました。
私がやってみたかった探究学習における指導のノウハウがそこにはあったのです。
そして、短期間で「KIDA(キーダ) PROJECT」を立ち上げ、このプロジェクトを通じて多くの子供たち、地域の人々と出会い、オンライン上で探究活動を実際に行うことができました。
これまでもGIGAスクール構想などを中核としながら、ICT教育の推進が図られてきましたが、それらを利活用して授業を行っているところはごく一部の学校に限られていたのが現状です。今回のコロナ禍によって、ICT教育の重要性が指摘されるようになり、教育改革の波が一気に学校に押し寄せたという感覚があります。
■探究学習の課題と今後の展望
本研究では、新型コロナウイルスによる影響で、子供たちには自宅からオンラインで探究学習プロジェクトに参加してもらうことになり、PC やタブレット等を所持し、かつネットワーク環境が整備されている(特に小学生の場合は)保護者がサポートできる環境にある等、参加できる対象者が限られてしまいました。
今後の課題は、地域住民や学生サポーター等の協力を得て、子供たちが自宅以外でもオンライン学習ができるような、新たな「学びの場」づくりを検討していくことが必要となります。
探究学習は、これまで見てきたようにまだまだ発展途上の学習分野ですが、知識伝達型の学校教育は終わり、今後は知識と経験をうまく組み合わせて新しい価値を生み出す方向へと確実に向かっていると考えらえます。
「KIDA(キーダ) PROJECT」で実施した探究体験【(R)こども商品開発】を通して、子供たちがイキイキと主体的に学んでいる様子が手に取るようにわかりました。しかし、これを学校現場で行うとすれば、クラス担任一人の力だけでは、到底、個別最適化した学びの実現には繋がっていかないと考えます。
こうした教育実践を日本全国の教育現場に広げていくことができるよう、さらに研究を進めていきたいと思っていますので、ぜひ興味や関心をもった方はお気軽にお声かけください
■:慶應義塾大学 SFC 研究所について
慶應義塾大学 SFC は、慶應義塾が創立(1858 年)以来、培ってきた様々 な理念や体制、社会ネットワークを基盤に 1990 年に開設されました。その後、約30年にわたり、慶應義塾の根幹の 1 つである実学を推進する「未来を創る大学」として、学問を超領域に捉え、未来を切り拓く「問題発見・ 解決」を中軸に据えながら、「知の再編」も先導してきました。
SFC 研究所は、その SFC における教育・研究活動と、産官学および国内外の関連活動との双方向の協調関係を育みながら諸科学協調の立場から 先端的研究を行い、社会の発展に寄与することを目的としています。学問を超領域に捉え、未来を切り拓く「問題発見・解決」を中軸に据えながら、「知の再編」を先導するという、21 世紀の先端研究をリードする研究の拠点として、SFC 研究所は、産官学金民 の多彩な訪問研究者とともにプロジェクトを推進しています。
■キッズM 会社概要
https://peraichi.com/landing_pages/view/kidsm
会社名: 一般社団法人 キッズM
所在地: 〒104-0061 東京都中央区銀座 5−6−12 みゆきビル7F
事業内容:小学生〜高校生向けキャリア教育探究プログラム開発・提供
(個人/学校・団体向け)
小学生〜高校生向けワークショップ・イベントの企画・運営
(個人/学校・団体向け)
キッズM【(R)こども商品開発】は、慶應義塾大学SFC研究所上席所員主催「KIDA PROJECT2020」、独立行政法人 国立青少年教育振興機構 子どもゆめ基金2020・2021に採択され、実施しました。
【キッズM メディア掲載実績】※五十音順
朝日新聞EduA、産経新聞、フジサンケイビジネスアイ
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