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老舗企業、初の4万社突破 出現率は「京都府」が5.15%で最高 業種別では「醸造系」が目立つ、1000年企業は9社が判明

帝国データバンクが把握している、2022年8月時点で業歴100年を超える老舗企業 は、4万409社を数えた。毎年およそ1,000~2,000社が業歴100周年を迎えるなか、初めて4万社を突破した。2023年に100周年を迎える企業は約2,000社あり、さらなる増加が見込まれる。また、全体に占める老舗企業の出現率は2.54%だった。

江戸開府以前の創業は152社を確認 明治時代に誕生した企業も2万社以上が存続

 老舗企業の約4万社を元号別にみると、江戸時代が開府した1603年以前に創業した企業は152社となった。そのうち、日本最古の企業として有名な金剛組(578年創業、大阪府)を筆頭に「業歴1000年企業」は9社を数えた。次いで、250年以上続いた江戸時代に創業した企業は3,345社、約40年間の明治時代には22,122社、大正時代(業歴100年を迎える1922年8月まで)に創業した14,790社が存続している。

老舗出現率 は「京都府」が5.15%でトップ 「山形県」「新潟県」など日本海側が目立つ

 全国の老舗出現率を都道府県別にみると、京都府が5.15%でトップだった。全国のなかで唯一5%を超えている。古くから都があり歴史的建造物が多くあったことや、第二次世界大戦中の被害が比較的小さかったことが老舗企業の存続に貢献していると考えられる。

 続いて日本海側の地域が上位に並ぶ。山形県、新潟県のような「酒どころ」や、福井県、滋賀県でも老舗出現率が高い。いずれの地域も、江戸時代中期から明治30年代にかけて、海運の要で北海道から大阪を結んでいた「北前船」の寄港地が多く、商業が栄えていたことが影響しているといえよう。一方で、九州エリアでは軒並み老舗出現率は低く、特に沖縄県は0.15%にとどまる。県内の老舗で最も多い業種は「蒸留酒・混成酒製造」の9社で、泡盛を製造している新里酒造(1846年創業、沖縄県うるま市)が最も古い。

 

 老舗出現率を市区郡別でみると、上位10地域のうち4地域が京都市内だった。加えて、千葉県勝浦市、その隣に位置する鴨川市、兵庫県美方郡は古くから港町として栄えており、水産系に関連した業種が多く並んでいる。また、新潟県加茂市は日本有数の桐箪笥の生産地で、木製家具製造業が目立つ。山梨県西八代郡では和紙製造など紙に関連する業種を中心に文具や事務用品関連も多いことが特徴。福井県小浜市は、奈良時代から京都に通ずる「鯖街道」「御食国」として栄え、交通の要所だった。それぞれ古くから根付いた文化を有していることが、高い老舗出現率の一因とも考えられる。

 

業種別ではテナント貸しなどの「貸事務所」が最多 酒・建築・服飾関連が上位に並ぶ

 老舗企業を業種別にみると、「貸事務所」が1,245社でトップとなった。これらは、古くから保有する不動産を活用してオフィスビルなどを建てたことで、本来の主業よりも貸事務所業の収益ウエイトが大きくなるケースが多いことによる。

 次いで、「清酒製造」も893社と多く、それにともない「酒小売」や「酒類卸売」も上位となっている。同様に、「一般土木建築工事」「木造建築工事」といった建設業や、「呉服・服地小売」「婦人・子供服小売」のような服飾業のように、類似した業種が上位に並んでいる。3番目には「旅館」が続いた。特に西山温泉慶雲館(705年創業、山梨県)は「世界最古の宿」としてギネス世界記録に登録されている。他にも温泉旅館を中心とした、湯治場として始まり数百年と続く老舗旅館が今でも数多く存在している。

業種別の老舗出現率、「清酒製造」が78.3%とダントツ 新規参入が困難な「醸造」分野が上位に
 

 それぞれの業種のなかで占める老舗出現率をみると、社数ベースで2番目に多い「清酒製造」が78.3%で最も高かった。清酒製造は主に日本酒の製造を指す業種で、そのなかでも「郷乃譽(さとのほまれ)」が定番銘柄として有名な須藤本家(1141年創業、茨城県笠間市)の業歴が最も長い。事業を行うには酒類製造免許が必要となるなかで、他の酒類業種と比較して特に新規参入が難しいこともあり製造免許場数が減少傾向となっていることも、老舗出現率が高い一因といえよう。
 その他にも“醸造”系の業種が上位に並んでおり、「しょう油等製造」(60.0%)、「こうじ類製造」(51.3%)、「味そ製造」(50.5%)では半数以上が老舗企業となっている。さらに「蒸留酒・混成酒製造」(47.1%)や、花火業者を指す「煙火製造」(45.7%)も高い。

 

 

 

 

 

 

現代表の就任経緯、老舗企業の「同族継承」割合は77.3%、全体を大きく上回る
 

 日本が老舗大国である理由の一つに、同族が世襲で後継ぎとなる、いわゆる「ファミリービジネス」の定着による経営の安定があげられることが多い。同族企業やオーナー企業にはさまざまな定義があるが、現代表の就任経緯が「同族継承」の割合をみると、全体では40.4%となったのに対して、老舗企業では77.3%で8割近くにのぼり、全体を大きく上回っている。

後継者不在率、老舗企業では49.0%と半数以下

 後継者の不在などが原因となり事業継続が断たれる「後継者難倒産」の件数は2021年に過去最多を更新するなど、日本の事業承継は厳しい局面に立たされている。2021年10月時点の後継者不在率は61.5%となり、減少傾向ながらも高水準が続いている。これに対して老舗企業では49.0%と半数を下回り、全体より12.5ポイント低い結果となった。

老舗企業の社長平均年齢は62.2歳、全体より1.9歳高い

 社長年齢の高齢化は止まらず、2021年時点で平均年齢は60.3歳と過去最高を更新した。老舗企業のみでみると、全体より1.9歳高い62.2歳となっている。老舗企業は伝統工芸など長年の業務経験による「熟練さ」が問われる業種が多いことや、社長の年齢層が比較的低いサービス業の割合が少ないことが、全体の平均年齢を上回る要因と考えられる

売上高は半数近い44.9%が「1億円未満」、老舗出現率では「1,000億円以上」がトップ

 老舗企業のなかで売上高が判明している企業をみると、約半数の44.9%が「1億円未満」だった。100年以上経営している企業となると大企業のイメージがあるが、規模は小さくとも着実に長く事業を続けているケースが大半を占める結果となった。なお、売上高「1,000億円以上」は全体の0.9%と非常に少ない一方で、老舗出現率をみると、20.7%と最も高くなった。さらに、「500億~1,000億円未満」では14.2%、「100億~500億円未満」では9.6%となり、売上高の区分が大きいほど老舗出現率が高い。

4万社を超えた老舗企業 なかには 業種を変化させながら事業継続した姿も

 老舗企業は4万409社となり、初めて4万社を超えた。「商いは牛のよだれ」という諺もあるように、日本には守り抜いてきた事業を切れ目なく次代に繋ぐことを是とする社会風土がある。実際に、古くに栄えた清酒やしょう油・味そなどの醸造業、建設業、呉服などの服飾関連のような業種では、今も多くの企業が事業を続けている。他方で、帝国データバンクが老舗企業を対象に実施した「100年経営企業アンケート調査」(2022年5月10日発表)では、創業事業から異なる、あるいは応用・派生した事業へと変化している企業は半数にのぼることが判明。さらに、今後取り組みたいこととしては「新製品・商品・サービスの開始」が38.0%でトップだった(複数回答)。このような新たな変化を求め改善を重ねる老舗企業の姿は、次なる老舗企業を生み出していくための一つの模範となるだろう。

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