左:「日本工芸産地博覧会」開催模様/右:入退場口に設置された人流解析用の画像解析カメラ
「日本工芸産地博覧会」を主催する日本工芸産地協会が持つ“新しい形の体験型イベントの開催を通して、伝統工芸品の未来を創っていきたい”という想いに共感するとともに、DX化の遅れという伝統工芸業界が抱える課題の解決にEBILABが持つノウハウやソリューションを活かせるとの考えから、この度の協賛が実現しました。
伝統工芸業界のDX化は思うように進んでおりません。そこで「日本工芸産地博覧会」のような展示会形式のイベントを通じて、実際に得られるメリットを体感してもらいたいという主催者の意図がありました。
そこで、伝統工芸業界のDX化をサポートするためにEBILABが提供したソリューションは、「画像解析カメラを用いた人流解析」「POSシステムを用いた購入者分析」「QRコードを用いたWEBアンケート」の3つです。
この度のサポートの成果として、イベント開催期間中に取得した各データを分析することで、「日本工芸産地博覧会」のような展示会形式のイベント運営に示唆を与える様な結果や考察も得られたので、合わせてお知らせします。
この度サポートした伝統工芸業界のようにサービス産業の現場には、最新技術をインストールすることで、効率化や省力化が図れる領域が多数存在します。EBILABは今後も、“創業150年の老舗食堂”という実体験に裏打ちされたノウハウとITの力で、サービス産業が抱える課題の解決に取り組んでまいります。
- サポート内容の詳細
「日本工芸産地博覧会」のDX化をサポートするためにEBILABが提供したソリューションは、以下の3つです。
《1》画像解析カメラを用いた人流解析
画像解析カメラの設置イメージ
イベント会場唯一の入退場口に、本体でAIによるデータや処理が可能なIoT カメラ「Vieurekaカメラ」を設置し、「来場者数」「来場者の年齢」「来場者の性別」といったデータを取得しました(※)。来場者傾向を分析したり、来場者の入退場から会場内の混雑状況をリアルタイムで把握することが可能となりました。
※カメラで撮影した映像はIoTカメラ内でAIによりデータ処理され、その結果のみがデータとして管理者に送信されます。来場者の肖像を侵害したり、個人情報を取得するものではありません。
《2》POSシステムを用いた購入者分析
イベント出展者ブースにPOSシステムを導入し、各ブースの「商品販売数」「購入者属性」「購入日時」やイベント全体としての「商品販売数」「来場者傾向」などの取得、管理、分析が可能となりました。
《3》QRコードを用いたWEBアンケート
会場内のポスターやイベントフライヤーに掲載したQRコードからWEBアンケートフォームにアクセスすることで来場者アンケートにお答えいただきます。手書きによるアンケート用紙の回収よりも迅速かつ正確にアンケート結果を集計し、スピーディーなイベントの評価や改善が可能となりました。
- 取り組みの結果/考察
前述の3つのサポートを通して、「日本工芸産地博覧会」のような展示会形式のイベント運営に示唆を与える様な結果や考察が得られました。
《1》画像解析カメラを用いた人流解析の結果
画像解析カメラから見た入退場口
イベント会場唯一の入退場口に画像解析カメラを設置し、「入場」方向へ歩いた人を検知し入場者としてカウント、「退場」方向へ歩いた人を検知し退場者としてカウントすることで入場者数の推移を1時間毎に集計。開催3日間における来場者数の傾向や混雑時間などの可視化を図りました。こうしたデータに基づき、スタッフの人数や配置を最適化することで、イベントの運営をスムーズ且つ効率的なものにできると考えます。
3日間の入場者数の推移
《2》POSシステムを用いた購入者分析の結果
①最も購買率が高い時間帯は16:00~17:00
3日間とも購買率が高い時間帯は16:00~17:00となりました。理由として、日中はワークショップなどの体験型イベントが多いため、手荷物が増えることへの懸念からイベント終了間際に購入が集中すると考えられます。手荷物預かりのスペースを設けるなどすることで手荷物への懸念がなくなれば、全時間帯で購買率が上がる可能性がある他、夕方から販売スペースを拡大することも効果的と考えられます。
購買率の高い時間帯は16:00~17:00
②購入者の多くは女性。男性向けや家族向けの商品をラインナップすることで売上向上の可能性
購入者の多くが女性である一方、入場者の男女比は概ね半々でした。このことから男性向けの商品に力を入れることで購買が上がる可能性があります。また、客層には家族連れも多いため、家族で使用できるものなどをラインナップすることも効果的であると考えられます。
③会場内において特に売上が高いエリアを可視化
エリア内のレイアウトによる売上の分布 (青色が濃いほど売上が高い。灰色はデータの無い店舗。)
円形に配された会場内でも特に売上の高いエリアが可視化されました。円形の外側の店舗は売上が少ない傾向にある一方、エリアの出入り口となる通路付近では、目につきやすい外側の店舗の売上が高い傾向になりました。会場のレイアウトについて内側・外側の概念ができないように店舗を配することで、出店エリアの公平性やエリア内の売上の平準化が図れると考えられます。
《3》QRコードを用いたWEBアンケートの結果
①イベントを知ったきっかけは「口コミ」や「SNS」
イベントを知ったきっかけ に関するアンケート結果
アンケートの結果、イベントを知ったきっかけの第1位は「口コミ:29.11%」、次いで「Instagra:17%」「通りがかり:16.71%」の順でした。SNSでの情報発信や口コミの形成が集客に効果的と考えられます。効率化の観点から、現状のポスター設置など以上にSNSでの告知に注力することも有効と考えられます。
②ご指摘・ご要望に多く見られたキーワードは「ワークショップ」「わかりにくい」
ご指摘・ご要望に多く見られたキーワード
アンケートの「ご指摘・ご要望」の項目に多く見られたキーワードとしては「ワークショップ」「わかりにくい」というものが上がりました。
「ワークショップ」については、ワークショップイベントへの興味の高さを示しています。「気になったイベント内容」の設問でワークショップが高評価であることも、これを裏付けています。遠くへ行かなければ体験できないことを一箇所に集まり体験できるメリットは大きく、ワークショップは工芸を知る良いきっかけにもなると考えます。
一方、「わかりにくい」について詳細を見てみると、店舗の位置、スランプラリーの場所など会場における各ブースのレイアウトがわかりにくいのと意見が多数を占めました。こうした課題は、ブースごとに大型の看板を掲出したり、入り口付近に大きな会場マップを設置することで改善すると考えます。
【主催者の声】
日本工芸産地博覧会ロゴ
日本工芸産地博覧会は、商流の異なる日本各地の工芸メーカーが主体的能動的に開催した、はじめての全国規模での一般消費者向けイベントです。来場のお客さまには、まず工芸を体感してもらうことに重きをおきました。そして今回のEBILABさまによるご支援で、全国の工芸メーカーにもまずDXを体感する機会をいただけたことは業界にとって大きな一歩であり、積極的な施策へとつながっていくことを期待しております。
- 今後の展望
EBILABは、この度の「日本工芸産地博覧会」への協賛で得られた知見を、今後開催の増加が見込まれるオフラインイベントの実施や運営に様々な形で活かしていきたいと考えます。アイデアとしては、下記のような活用法が想定されます。
《案1》オフラインイベントにおける「ダイナミックプライシング」の導入
「画像解析カメラを用いた人流解析」を活用し、チケットの販売動向、イベントの来場者数、会場の混雑状況などに応じて入場料を変動させる「ダイナミックプライシング」を導入。チケット販売や会場稼働の向上、来場促進を図ります。
(ダイナミックプライシングの例)
・チケットの販売が芳しくない日→入場料を下げてチケット販売や会場稼働の向上を図る
・来場者数が少ない時間帯→入場料を下げて当日の来場促進を図る
《案2》“アフター/ウィズコロナ時代”“ニューノーマル時代”のオフラインイベントに最適な来場者オペレーションの策定
「画像解析カメラを用いた人流解析」を、効率的な来場者誘導や適切な入場制限を行うためのオペレーション計画の策定や改善に活用。イベント会場の混雑緩和や、来場者同士のソーシャルディスタンスの確保を図ります。
(来場者オペレーションの例)
・会場内の過剰な混雑を察知→一時的な入場制限を実施
・会期中を通して空いている傾向の時間帯が存在→その時間帯に来場を促す整理券を発行し、来場者数を平準化
《案3》販促物最適化ソリューションの開発
「画像解析カメラを用いた人流解析」を活用し、来場者の情報を即時に分析。会場内の什器に設置されたモニターやデジタルサイネージに、来場者と親和性の高い販促物を放映することで、商品販売の促進を図ります。
(販促物最適化の例)
・来場者に女性が多い→女性向け商品の販促物を放映
・来場者に高齢者が多い→高齢者向け商品コーナーへの誘導を放映
- 【参考】「日本工芸産地博覧会」について
日本の工芸が、今を生きる姿を見よ
ここでの体験が全て、未来の産地をつくる
日本工芸産地博覧会は、全国各地から職人が集い、ひとつの産地をつくる、初めての試みです。ここでは誰もが、まだ行ったことのない産地、見たことのない工芸に出会い、職人の技を見て、話を聞き、全ての工芸に触れることができます。ここでの初めての体験は、強い記憶と共に、より深い学びへの関心を呼び、何より工芸とはこんなに楽しいものなのか、と、きっと心に響くことでしょう。かつて万博が開催された大阪の地で、日本の未来における文化の礎となる。それが日本工芸産地博覧会の願いです。
《開催概要》
日程:2021年11月26日(金)、27日(土)、28日(日)
時間:10:00~17:00
会場:日本工芸産地博覧会大阪2021=万博記念公園内お祭り広場(太陽の塔前)/博覧会内カンファレンス=国立民族学博物館みんぱくインテリジェントホール
入場料:無料 ※万博記念公園への入園料がかかります(大人260円・小中学生80円)
内容:
・日本全国の工芸産地ワークショップイベントの開催
・日本全国の工芸品の販売
・マルシェイベントの開催
・カンファレンスイベントの開催
主催:一般社団法人日本工芸産地協会
運営:日本工芸産地博覧会実行委員会
共催:万博記念公園マネジメント・パートナーズ
後援:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会、独立行政法人中小企業基盤整備機構近畿本部
協力:株式会社JTB、国立民族学博物館、株式会社シティライフNEW、株式会社サウンドソニック
協賛:株式会社スマレジ、株式会社EBILAB
制作:総合ディレクション graf/クリエイティブディレクション 服部滋樹/会場設計 竹之内佳司子・合田知代/アートディレクション・企画 村川晃一郎/デザイン paragram/LPサイト制作 MRI・otto、ディレクション 古澤佑介、デザイン 中田由実子
- 株式会社EBILABについて
「EBILAB」は三重・伊勢で100年を超える老舗食堂「ゑびや」の経営メソッドから生まれたサービス産業のためのシンクタンクです。
サービス産業のための飲食・小売り向け店舗分析ツール「TOUCH POINT BI」をはじめとした分析サービスの提供により、店舗のコンディションを可視化するデータを自動で収集・分析することで、効率的で収益性の高い店舗運営の実現をサポート。また、コロナ禍の新たな取り組みとして、飲食店における「混雑予報AI」、遠隔接客システムである「WEB来店」や空間や建物内の「3D構築」などの新規事業を立ち上げております。
- 会社概要
社名:株式会社EBILAB
本社:〒516-0024 三重県伊勢市宇治今在家町13
代表者:代表取締役 小田島 春樹
設立:2018年6月4日
資本金:6,000万円
TEL:0596-63-6364
FAX:0596-63-5222
事業内容:飲食店向けクラウドサービスの開発・販売・サポート
URL:https://ebilab.jp/
社名:有限会社ゑびや
本社:〒516-0024 三重県伊勢市宇治今在家町13
代表者:代表取締役 小田島 春樹
設立:1994年1月
資本金:500万円
TEL:0596-63-5135
営業時間:9:30~17:00
定休日:無休
事業内容:老舗店舗の運営・販売
URL:https://www.ise-ebiya.com/
※有限会社ゑびやと株式会社EBILABの関係性について
有限会社ゑびやは三重県伊勢市にある老舗の食堂。「ゑびや」にて自社開発を行った来客予測ソリューションを活用した経営で、数年間で飛躍的に利益率を増加させました。「株式会社EBILAB」はこの来客予測ソリューションを他社提供するためのシステム開発・コンサル業部門の“新規事業”として2018年に生まれました。
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